2017年09月11日

いかんともしがたい壁〜作家編


9/15がコンテストの締め切りなので
更新が適当になり、すみません。

日本語で書く外国人作家、リービ英雄さんが
エッセイに書かれていたのですが

「バカヤロー、お前なんか、文学者じゃない」

という侮蔑を日本の文芸誌で受けたそうなのですが、
それをアメリカ人に伝えようとしても

「文学者」と言う言葉を

英語に翻訳出来ない!


という問題にぶち当たったそうです。

ぼくの理解でいうと、日本語の「文学者」は、文学を研究する人も
文学を批評する人も、文学を創作する人も含まれている。
(中略)
「あいつは文学者じゃない」と日本語で言ったとき、
「あいつは本を何冊書いても何も分っていない」という
ニュアンスもありうるとすれば、
「文学者」たりうるかどうかという判断の中には
どのように書いているかだけではなく、
どのように読んでいるかという資質も問われている。

(「文学者の国に、ぼくがいる」リービ英雄)

このエッセイは、アメリカの記者に
「あなたのアイディンティティーは何なのですか?」
と問われ、「ジャパニーズ・ライター」と答えた後、
”Bungakusya”と言うべきだった…というエピソードで
締めくくっているのですが、

言葉の厳密性を大事にする作家であればあるほど、

実は文化の壁は厚いのだ‥‥と思わされました!


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万葉集を語るインテリ…。
posted by yuki at 15:27| Comment(2) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年09月01日

Lars and the real girl friend〜魂の救済措置


映画『ラースと その彼女』観てみました!

Lars and the real girl(USA 2007年)



〜あらすじ

田舎町に住むラースは、シャイな独身男性。兄夫婦の家の裏で
おとなしく一人暮らしをしています。
ある日ラ−スは兄のガスと妻カリンに「彼女が出来たから紹介する」と
告げます。大喜びする二人でしたが、ラースが連れてきたのは
人形のビアンカだったのです…。

感想(※ネタバレあり)

これは公開当時から知っていたのですが、観るのを躊躇して
いた映画です。ダッチワイフとセックスする人のドキュメンタリーなど
受け入れられなかった私は、積極的に見る気になれませんでした。
(ネットで感想を読むと、そう思っていた人は結構な割合でいました。)
10年経った今は、大人になり許容範囲が広くなったのだと思います。

いざ観てみると、良心的に作られた、内容がある良い映画でしたね。
テーマは真面目に掘り下げてあり、脚本も丁寧です。

まず冒頭からラースが独り者であることに”Are you gay?”
と聞かれるのです。これは西洋社会にいる私にはとてもよく分かるのですが、
西洋の方がパートナー同伴で過ごすことが多いので、交際相手が
いない人間は肩身が狭い思いをします。
兄には”You spend so much time by yourself!”と説教され
大人しい性格のラースには徐々にストレスになっていくのです。
これは日本でもよくあることですが、独身者にとって「いい人いないの?」
という周囲の挨拶代わりのような質問が、当事者にとってはかなり
プレッシャーになります。

ラースは人形ビアンカと恋人関係を持つことで、日々の生活での
ストレスが軽減されます。人に何を言われてもビアンカとの
二人きりの世界が、外界の辛さからラースを守ってくれるのです。
ラースはビアンカに話しかけることで、ほっとくつろぐことが出来て
優しい気質の自分を保っているのです。

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「ビアンカは医者に診せる必要がある」という口実で、兄夫婦はラースを
病院に通院させるのですが、担当医にラースは兄の妻にハグされるのが
嫌だということを告白します。
ラースは生身の人間との触れ合いに強い拒否反応があり、
そのために普段から何重も服を重ね着している、と言います。
これはそのままラースが対人関係に持っている壁の厚さを示しています。

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そして町の人々はラースの異常な行動に理解を示します。
ビアンカをラースの彼女として受け入れて、美容院で彼女の
髪型を変えたり、本を読むボランティアの仕事をさせます。
(実際はその場に座らせて、オーディオブックを流しているだけ
という、町の人の涙ぐましいアイデア)。

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スケジュールが埋まっている彼女に、ラースは動揺し
大人しかった彼が、初めて激しくビアンカに怒ります。
兄の妻カリンは”She has her own life!”と言って
ラースを責めます。
そうです、ラースにとってビアンカはどこまでも自分にとって
癒しであり、都合の良い”人形”で無くてはならず、対等に
付き合う相手ではないのです。自分の知らないところで勝手な
ことをするのは許さないのです。(この辺は妻を一人の人間として
見ないで家に閉じ込めておきたい男性と関係性が似ていると思います)。

そしてラースはビアンカのいない時間に、同僚のマルゴと
ボーリングに出かけます。楽しくボーリングに興じた
ラースは、別れ際マルゴと素手で握手することが出来ます。
人に触られることをあんなに嫌がっていたラースが、
一つハードルをクリアした瞬間でした。

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現実の人間関係が苦痛でなくなったラースにとって、
もはや人形ビアンカとの妄想は整合性が取れなくなりました。
ラースはビアンカが重篤ということにします。
ラースが大人になるためには、ビアンカの存在を消す、という
通過儀礼を乗り越えなくてはならないのです。
ビアンカの死は彼にとって必然だったと言えるでしょう。

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町の人はビアンカの大掛かりな告別式を行います。
ビアンカはお墓に眠り、ラースはマルゴと新しい一歩を
歩み始めるのでした。

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※ポイント
町の人たちが尋常でない寛大さで、ラースの作った妄想に
付き合うことにより、逆にラースは自分の妄想に終止符を
打つことが出来たのです。
ここは大変勉強になるところです。
私たちはついつい常識で「そんなのおかしいよ!」と社会通念から
逸脱した行動を取る人を断罪してしまいます。
しかし彼らが息苦しい社会で生きることに、行き詰ってしまった末の
行動だとすればどうでしょうか?責めるだけでは問題を解決するどころか、
彼らを余計に苦しめるでしょう。
この町の人ほど優しくなれなくても、少しでも共感してあげることで
ラースのように自力で立ち直るようになるかもしれません。

面白おかしく茶化すことも出来るはずですが、
偏見が持たれないように、きちんと作ってあると思います。
マイノリティー問題についてお手本になる脚本ですね!
こういうところは、海外の映画はさすがです…。
posted by yuki at 19:49| Comment(2) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月27日

Underground〜渾沌(カオス)の世界


最近映画ばっかり紹介して、読者さんにプレッシャーを
かけているような気がしないでもないですが…(^-^;

今日ご紹介する映画は、『死ぬ前に観ておけ』リストに
入ると思う名作!

1995年、カンヌ映画祭パルム・ドール受賞作です。

UNDERGROUND
(ドイツ、ハンガリー、ユーゴスラビア、
ブルガリア合作 1995年)




〜あらすじ
第二次世界大戦中のベオグラード、ナチスの爆撃を受け
街は酷い惨状になります。マルコは友人クロと仲間たちを地下に
かくまい、そこで生活しながら武器を密造させることにします。
マルコは武器商人として巨万の富を築きながら、一方で仲間には
「まだナチス占領が続いている、外に出るのは危険だ」と嘘をついて
戦争が終結したことを知らせないままにしました。
冷戦時代に入り、新政権の下マルコは大統領の側近としてのし上がります。
何も知らない仲間は地下で暮らし続けることになるのですが…。

第二次世界大戦から冷戦、ユーゴ内戦、ユーゴ・スラヴィアの
終焉までの50年をユーモラス寓話的で寓話的に描いた作品です。
と言っても、映画内ではプロットのようなものはありません。
全編に賑やかなトランペットの音が鳴り響き、登場人物は
銃を撃ちまくり踊りまくり、喧騒と狂気のカオスです。
2時間50分と長い映画ですが、退屈せずに観られると思います。

監督のエミール・クリストリッツァはボスニア紛争勃発で
「この映画を作らなくてはならない!」と強い使命を持って
制作したそうです。
その情熱が映画の隅々まで感じることが出来ます!
(本当にこんな映画よく撮れたね…どれだけお金かかったのかしら…)

日本は過去に一度も外国の占領下になったことはなく、独自の言語も
文化もそのまま残っていますが、世界にはこのように消えていった国も
数多くあります。そのことを考慮すると、私は日本文化をもっと大切に
しなくてはならないと思うのでした。

とにかく観るべし!

Underground 1995 (2).jpg

飼育係とオランウータンの絆に泣けます…。
posted by yuki at 09:59| Comment(2) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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